すべての花へそして君へ②

「お前柚子と行けよ」

「いや。ユズちゃんが応援してくれてるから、俺はアオイちゃんと行くんだ」

「は? 意味わかんないこと言ってねえで、さっさと引けよ」

「うぐっ。……ツバサ、もうちょっと顔に出してよ」

「超本気だから無理」


 ……え。彼らは一体何をしているの? あんな部屋の隅っこで。


「え? 見てわかんない? ババ抜きだよ」

「わかってる。わかってるけど……まあ、さっきのも戦いとは言えなかったかも知れないけど。もはや静かすぎやしないかい? あそこの戦い」

「見て。あのツバサ、ちょー本気versionだ」

「発音いいね!」

「あんたには負けるけどね」

「え? そ、そう??」

「うん」

「いや~! そこまで褒められると照れるぜい」

「そこまで褒めてないよ」

「じゃあここでわたしがいっちょ手本を見せてあげよう」

「見せるんじゃなくて聞かせるんだよ。要るのは視覚じゃなくて聴覚だよ」

「それでは……ごほん。ああー……。ばーじょ」

「あ。カナが引くからちょっと黙ってて」

「要るの視覚でしょ!? 聴覚じゃないよねっ!?」


 そんなことを言われてしまったので、しゅんとなりながら、わたしも彼らの戦いを観察することに。


「……っ、じゃあ、こっち!」


 そうしてカナデくんが引いたのは……。


「……チッ。こういう時だけ運いい奴ムカつくんだよ」

「……め。めっちゃ怒ってる……っ」


 若干ビビりながらも、無事にカナデくんの勝利でここの対決は幕を閉じた。あれま。兄ちゃん負けちゃったよ。


「あれだね。やっぱりオカマの方が威力すごいんじゃない?」

「どんな威力だよ……」


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