誰にでも優しいくせに、私だけに本気なんてズルい– 遊び人エリートのくせに、溺愛が止まらない –
私は少しだけため息をついたふりをして、それでも心はもう決まっていた。

「……なにそれ。」

「な。ほら。」

隼人さんが、もう片方の肩にも腕を回してきた。

私は抵抗せず、その腕の中におさまる。

こんなやり方、ずるいよ。だけど、抗えない。

「分かりました。でも――条件を出していいですか?」

隼人さんが少し驚いたように私を見た。

「いいよ。」

私は静かに息を吸い込み、目を逸らさずに言った。

「川口さんを、ちゃんと振ってあげてください。」

一瞬、空気が止まったような気がした。

「……川口?」

「彼女、あなたのことを好きなんです。泣いてました。想いを断ち切らせてあげてください。」

隼人さんは一瞬だけ目を伏せ、そしてポケットからスマホを取り出した。

何も言わずに数回タップすると、電話が繋がった。
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