誰にでも優しいくせに、私だけに本気なんてズルい– 遊び人エリートのくせに、溺愛が止まらない –
店員さんが笑顔で出迎えてくれたが、すぐに少し困ったような表情を見せた。

「すみません、空いてる席がここしかなくて……」

案内されたのは、壁際の隅の、小さな二人掛けの席だった。

テーブルは小さく、椅子と椅子の間も狭い。

でも――

「いいわね。」

私は微笑んで、先に座った。

「こういう席、実は好きなのよ。人の目が気にならなくて、二人だけの世界みたいで。」

「……そういうところ、可愛いよね。」

「えっ?」

何気なく言われた言葉に、私は顔が熱くなるのを感じた。

まっすぐに見つめられて、目を逸らしたくなったけれど――

「ねえ、今日はお酒、飲んでもいい?」

「もちろん。俺が送るよ。今日は帰したくないし。」

ドキリとした。

でも、もう拒む気持ちはどこにもなかった。

グラスに注がれた赤ワインの色が、まるで今の私の気持ちみたいに、深く、熱く見えた。
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