誰にでも優しいくせに、私だけに本気なんてズルい– 遊び人エリートのくせに、溺愛が止まらない –
「今まで、誰かの気持ちを受け止めるなんて、してこなかった。」

隼人さんは、グラスのワインを揺らしながら言った。

静かで、少しだけ自嘲めいた笑みだった。

「受け止めて、もし離れていかれたら……って思うと怖かったんだ。」

私は黙って、彼の横顔を見つめた。

普段、強くて堂々としているその人が、今、こんなにも寂しげな顔をしている。

「……美羽さんの時は、どうだったの?」

その問いに、隼人さんの手がぴたりと止まった。

しばらく黙ったあと、小さくため息をつく。

「美羽は……俺の“モテる部分”が好きだったみたいだ。」

「え?」

「要するに、派手な女関係とか、注目されてる姿とか、そういう“桐生隼人”を彼氏にしてる自分が、好きだったんだと思う。」

その言葉は淡々としていたけれど、どこか、痛みをはらんでいた。
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