誰にでも優しいくせに、私だけに本気なんてズルい– 遊び人エリートのくせに、溺愛が止まらない –
ポツリと呟くと、彼の笑みが止まった。

一瞬、真剣な眼差しになる。

「本当に?」

「うん……だって、心臓、バクバクしてましたから。」

その瞬間、彼の手がテーブルの上でそっと私の手を包んだ。

「じゃあ、今は?俺の声に……心、揺れてる?」

囁くような甘い声。

今度は、ちゃんと心に届いた。

「揺れています。」

私はそう答えた。

悪い男と、優しい男。その両方を持つ、隼人さんに。

「俺はしっかり捕まえるよ。」

その言葉とともに、彼の雰囲気が変わる。

ふっと目元の笑みを消して――自信に満ちた、大人の男の顔になる。

ああ、これが桐生部長。

いつも社内で誰もが憧れる、隙のない完璧な男の顔。

「君を捕まえて、絶対に離さない。」

堂々と言い切るその姿に、心がぎゅっと締め付けられた。

もうとっくに、心はあなたに捕まってるのに――。

そのとき、店員が料理を運んできた。
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