誰にでも優しいくせに、私だけに本気なんてズルい– 遊び人エリートのくせに、溺愛が止まらない –
「寒くない?」

そう言って、隼人さんがさりげなく自分のジャケットの裾を私にかけてくれる。

「ありがとうございます……」

少し戸惑いながらも、心はぽっと熱くなっていた。

歩道を歩きながら、私たちは他愛ない話をしていたけれど――

ふと、彼が足を止めた。

「……このあと、少し時間ある?」

「え?」

「うち、来ない?駅からも近いし……無理には誘わないけど。」

低く穏やかな声。でも、その目は真剣だった。

「別に、何かしようってわけじゃないよ。ただ……もっと一緒にいたい。」

その言葉に、胸の奥がふわっと揺れる。

私は一度だけ、足元を見て、そして顔を上げた。

「……分かりました。行きます。」

彼が安堵したように、ふっと優しく微笑んだ。

「じゃあ、こっち。」

私の手をそっと握り、指を絡めるようにして繋いだ手は、あたたかかった。

街灯の光の下、その手を見つめながら、私は思った。

――今夜だけは、素直になってもいいかもしれない。
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