誰にでも優しいくせに、私だけに本気なんてズルい– 遊び人エリートのくせに、溺愛が止まらない –
「付き合ってる。――本気だ。」

その言葉に、美香さんは凍りついたように立ち尽くした。

「嘘……隼人、あなたが誰かと本気になるなんて……」

「俺も、そう思ってた。だけど、今の俺には、紗英がいる。」

彼の言葉に、自分の心がどれほど脆かったのか、美香さんは初めて知った。

「……そっか。もう、私は要らないんだ。」

「……ありがとう。今まで、俺といてくれて。」

「そういうの、余計よ。」

美香は背を向けた。だがその足取りは、どこか未練を引きずるようで。

去り際、小さく言った。

「本気なら……ちゃんと、彼女を大切にしてあげて。」

その声は、かつて本気になってもらえなかった女の、最後の強がりだった。

私は、何気ない風を装いながら、彼の隣に立った。

廊下に差し込む朝の光が、二人の影をうっすら重ねていた。

「……見てたのか?」
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