誰にでも優しいくせに、私だけに本気なんてズルい– 遊び人エリートのくせに、溺愛が止まらない –
そう言って、スマホをそっと私の手に戻してきた。

彼の指先が、わずかに私の手に触れる。

ドキッとするくらい、優しい温度だった。

玄関のドアを閉めた瞬間、背中に回された腕に引き寄せられた。

唇が重なる。

やさしいのに、どこか切迫した熱を帯びたキスだった。

「……もう、したいの?」

笑うように言ったのに、私の声は少しだけ震えていた。

彼の欲情の早さに驚いたというより、そのまっすぐな熱に戸惑っている自分がいた。

「子供が欲しい。」

耳元で囁かれたその言葉に、思わず息を呑んだ。

「俺と紗英の子供。」

心の奥底まで響くような声だった。

真剣で、やさしくて、どこまでもまっすぐだった。

「……早すぎですよ。」

なんとか言葉を返すと、彼は微笑んだ。

「そうかな。でも、そう思ったんだ。君を抱きしめた瞬間に。」
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