誰にでも優しいくせに、私だけに本気なんてズルい– 遊び人エリートのくせに、溺愛が止まらない –
――なのに。

なぜこんなに、惨めな気持ちになるんだろう。

「……」

何も言えなかった。

微笑むふりをしながら、心の中で叫んでいた。

私は、“地味”だから選ばれたわけじゃない。

でも――そう思いたいのに、誰かにそう言われると揺らいでしまう。

桐生部長の言葉だけが、私の答えになる。

今、私には、それしか拠り所がなかった。

「それにしても、どんな女性と結婚するのか、想像がつかないのよね。」

上林さんがふいに呟いたその言葉に、私は手元のペンを止めた。

「桐生部長のこと、知ってるようで知らないのかしら。」

たしかに――そうなのかもしれない。

私はあの人の隣にいながら、彼の何をどこまで知っているんだろう。

「確かに……桐生部長のことって、あんまり知らないかも。」

思わず口に出してしまった。
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