誰にでも優しいくせに、私だけに本気なんてズルい– 遊び人エリートのくせに、溺愛が止まらない –
「あの経理部で主任を任せられるなんて、女性なのに大したもんだな。」

桐生部長は書類に目を通しながら、ふとそんなことを言った。

「ありがとうございます。」

形式的に頭を下げながらも、私は一歩も引かなかった。

「ですが、それとこれとは別です。ご提出いただく内容は、正式な記録として必要ですので。」

目を見て、はっきりと言い切る。

部長は小さく、くすりと笑った。

「お名前……ああ、篠原紗英さんか。」

私の名札をさっと目で追い、呟くように口にする。

なぜかその声に、背筋がほんの少しだけぞくりとした。

「君みたいな女性、初めてだよ」

不意にそんなことを言われて、私は少しだけ眉をひそめた。

「私のような女性と言いますと?」

冷静に返すと、彼はさらりと答えた。
< 18 / 291 >

この作品をシェア

pagetop