誰にでも優しいくせに、私だけに本気なんてズルい– 遊び人エリートのくせに、溺愛が止まらない –
「俺になびかない女性。」

その言葉に、一瞬だけ息が止まる。

からかいなのか、本気なのか。

その目が真剣すぎて、冗談に聞こえなかった。

でも私は、ぐっと視線を外さずに言った。

「仕事ですので。」

それ以上の感情は、絶対に表に出さない。

そう決めたはずなのに——胸の奥が、ほんの少しだけ熱を持っていた。

「分かったよ。」

そう言って、桐生部長はポケットからスマホを取り出し、画面を素早く操作し始めた。

何かを検索しているようで、次の瞬間にはペンを取り、さらさらと申請書に記入していく。

「それは、実際に接待を行った取引先ですか?」

確認のために問いかけると、彼はちらりと私を見て、低く笑った。

「ああ、心配しなくていいよ。」

そう言って差し出された書類。

そこに並ぶ丁寧な、けれどどこか色気を含んだ文字に、私は思わず小さくため息をついてしまった。
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