誰にでも優しいくせに、私だけに本気なんてズルい– 遊び人エリートのくせに、溺愛が止まらない –
「さてと。」

上林さんはグラスの最後の一口を飲み干すと、立ち上がる。

「私は夜の街に繰り出すわ。二人とも、仲良くね。」

そう言いながら、さっきのゴムをバッグの中へスッと戻す仕草が、どこか手慣れていて逆に恐ろしい。

私はというと、完全に置いてけぼりだった。

その横で、桐生部長は肩を揺らして笑っていた。

「……悪ノリされちゃったな。」

「本当に……」

私は俯いたままぼそりと返す。

でも次の瞬間、そっと私の手に触れる温もりがあった。

「さあ、行くか。」

「はい。」

どこへ向かうのかもわからないまま、私は彼に連れられて歩く。

タクシーに乗って着いた先は、まさかの――高級ホテル。

「ええっと……」

言葉を探す私の横で、隼人さんはすっと受付に歩み寄る。

「ダブルで一泊。」
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