誰にでも優しいくせに、私だけに本気なんてズルい– 遊び人エリートのくせに、溺愛が止まらない –
パタン、とファイルの山を崩してしまいそうになりながら、

体を縮めて息を殺す。

バレたくない。

今の私を、隼人さんに見られたくない。

一条さんに愛された直後の、この体を――。

「一条。お前、何を考えているんだ!」

声が鋭くなる。

一条さんの声は、逆に静かだった。

「桐生部長こそ、何しに来たんですか?」

「篠原を探してるんだよ。」

「あなたの“女”が、他の男といるかもしれないって思ったから?」

「……!」

「心当たりがあるんですね。」

しんと静まり返る倉庫に、男同士の感情がぶつかる音が響く。

「――まさかお前、本当に篠原に手を出したのか?」

一条さんは微かに笑った。

「俺の気持ちは、前から知ってたくせに。それでも手を出したのは、そっちじゃないですか。」

「……っ」
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