誰にでも優しいくせに、私だけに本気なんてズルい– 遊び人エリートのくせに、溺愛が止まらない –
一条さんが、倒れたまま私を見上げる。

隼人さんも、静かに手を下ろす。

言葉が出ない。

胸の奥が、ぐしゃぐしゃになっていた。

「付き合おうって。」

一条さんが立ち上がり、隼人さんの方を睨みつけるようにして言った。

「そう。俺たち、付き合ってるんです。だから……愛し合ったんです。」

私の心がズキリと痛む。

でも、それは――罪悪感の痛みだった。

桐生部長……隼人さんは、静かに手を下げた。

「そうか……でも、それでも――俺には、紗英しかいない。」

低く、深く、胸の奥に響く声だった。

「……おまえしか、いないんだ。」

その目が私をまっすぐに捉える。
怒りも憎しみもない。ただ、深い愛情が滲んでいた。

涙が、溢れた。

「……帰ろう。紗英。俺たちの家に。」

その一言で、私は気づいた。

この人は、私を信じている。

過ちさえも、受け止めてくれる覚悟がある。
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