誰にでも優しいくせに、私だけに本気なんてズルい– 遊び人エリートのくせに、溺愛が止まらない –
疲れているのはわかってる。仕事の責任も、部下たちを抱える立場も。

たとえ私と過ごす週末だけが、彼にとっての休息時間だとしても、それを責めるつもりなんてない。

けど──

それでも、女としての自分が、どこかに取り残されているような気がしてしまう。

私、もう……抱かれたくないのかな。

あのことが頭をかすめる。一条さんの件。

見つかってしまったあの日のこと。

あれ以来、隼人さんは私に優しくしてくれるけれど、どこかで無理しているようにも見えた。

心のどこかで、私を「許そうとしている」のだとしたら?

その優しさごと、怖くなる。

「……あのね、隼人さん」

ぽつりと声を出しかけて、飲み込んだ。

眠っている彼の背中が、やけに遠く感じた。

ほんの数十センチの距離なのに、指先が届かない。
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