誰にでも優しいくせに、私だけに本気なんてズルい– 遊び人エリートのくせに、溺愛が止まらない –
触れてしまったら、壊れてしまいそうで──怖い。

私は、布団の中でそっと膝を抱えた。温もりのはずの夜が、こんなにも冷たく感じるなんて。

それでも、嫌いになれない。だから、また明日も、笑ってしまうんだ。

「……おやすみ、隼人さん。」

唇の奥で囁いた言葉は、届かないまま、ただ静かな夜に溶けていった。


そのうち、美羽さんと給湯室で話すのも、当たり前のようになっていた。

「そろそろ、浮気したい頃じゃない?」

美羽さんが、スティックシュガーをくるくるとかき混ぜながら、そんなことを言う。

「そうなんですか?」

私は笑って誤魔化した。でも、どこか――図星だった。

「いや、桐生部長じゃなくて、篠原さんの方がよ」

「えっ!? 私の方⁉」
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