誰にでも優しいくせに、私だけに本気なんてズルい– 遊び人エリートのくせに、溺愛が止まらない –
「えっ……」

不意を突かれて声が漏れる。

彼はふっとクスッと笑った。

「毎日それ飲んでるよね。甘さ控えめのやつ。」

目が合うと、思わず逸らしてしまった。

なんで、そんなことまで覚えてるの……?

女子たちの視線が突き刺さるのを感じながら、私はカフェオレを受け取った。

ドクン、と心臓が小さく跳ねた。

あの笑みは、誰にでも見せてるものじゃない——気がした。


そして、月末。

経理部恒例の――というか、地獄のような――書類と現金の照合作業で、私はひとり残業していた。

「はあ……どうして合わないんだろう。」

電卓を叩きながら、私はため息をついた。

一枚一枚、伝票と出納帳を突き合わせる作業は、神経がすり減る。

ミスは許されない。でも、集中力も限界。

「一人でやるの、大変だな……」

思わずこぼれた独り言に、返事が返ってきた。
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