誰にでも優しいくせに、私だけに本気なんてズルい– 遊び人エリートのくせに、溺愛が止まらない –
その言葉に、心が少しざわついた。

美羽さんの言うことは、どこか本音すぎて、痛いほどわかる気がしたから。

「……でも、今の隼人さんは違います。」

気づけば私は、そう言い返していた。

「そうだね。」

美羽さんは、ほんの少し寂しそうに笑った。

「篠原さんのこと、きっと本気なんだろうね。あんな顔、見たことなかったし。」

「……え?」

「女を“欲しい”って目で見る隼人なんて……初めてだったよ。」

その言葉が、心に小さな火を灯した。


仕事帰り、会社の正面口で見覚えのある後ろ姿を見つけた。

(隼人さん……)

声をかけようと、一歩踏み出した瞬間。

彼の隣に、もうひとりの姿が見えた。

(美羽さん……?)

思わず柱の陰に身を潜める。

並んで歩くふたりの姿は、妙に自然で、どこか“お似合い”に見えてしまった。
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