誰にでも優しいくせに、私だけに本気なんてズルい– 遊び人エリートのくせに、溺愛が止まらない –
でも、桐生部長が黙々と仕分けや確認作業を手伝ってくれたおかげで、信じられないほどスムーズに仕事が進んだ。

時計は20時半。いつもなら日付が変わる寸前までかかる作業が、今日はもう終わりそうだった。

「ありがとうございます。本当に助かりました。」

素直にお礼を伝えると、部長は椅子から立ち上がり、大きな欠伸をしながら背伸びをした。

「ふぁぁ……飯でも食べて行くか。」

何気なく言ったその一言に、私は反射的に首を振った。

「い、いいえ! 私は……」

まさか“お持ち帰り”とか、そういう展開にでもなったらどうしようと、頭の中が軽くパニックになる。

部長はそんな私の動揺に気づいたのか、肩をすくめて笑った。

「遠慮しないで。すぐそこに、上手い定食屋があるんだ。」

あっさりとした口調に、私は拍子抜けして聞き返した。

< 25 / 291 >

この作品をシェア

pagetop