誰にでも優しいくせに、私だけに本気なんてズルい– 遊び人エリートのくせに、溺愛が止まらない –
「……定食屋⁉」

桐生部長が? あのホストみたいな人が?

「うん。俺、意外とああいうとこ好きでさ。」

そう言って笑う顔が、いつもよりずっと素に見えて、思わず見とれてしまった。

……この人、どこまでが“本当”なんだろう。

「……分かりました。」

自分でも驚くくらい、あっさりと口から出たその言葉に、桐生部長はにっと笑った。

「じゃあ、早く行こう。」

そう言って、彼は先に立ち上がる。

私も慌てて帰る準備をして、バッグを肩にかけた。

二人で静かなオフィスを出る。

夜の社内は、昼間の喧騒が嘘のようにしんとしていた。

足音だけが、妙に大きく響く。

エレベーターがちょうど降りてきて、扉が開いた。

すると部長は、何のためらいもなく手を伸ばして、ドアを押さえてくれた。
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