誰にでも優しいくせに、私だけに本気なんてズルい– 遊び人エリートのくせに、溺愛が止まらない –
そんな風に言われると、私の中の“信じたい気持ち”が、少しずつ削れていく気がした。

――隼人さん、私にも、ただ優しくしてるだけだったの……?


美羽さんが給湯室から去っても、私は動けなかった。

確かに裏切ってない。

でも、美羽さんとの関係は続いているし。

たぶん、他の女の子にも迫られたら優しくするんだろう。

「ううっ……」

給湯室の隅で、泣いてしまった。

すると誰かが給湯室に入ってきた。

慌てて背中を見せる。

「篠原さん。」

少し振り向くと一条さんがいた。

「篠原さん、大丈夫?」

一条さんの声は、思いのほか優しかった。私は震える手で涙を拭った。

「大丈夫……です。」

無理やり笑おうとしても、声が震えてうまく出ない。

「……何があったか、言わなくてもいい。」

一条さんは、私の背中越しにそっと言った。
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