誰にでも優しいくせに、私だけに本気なんてズルい– 遊び人エリートのくせに、溺愛が止まらない –
「そういうこと言わない。」

「どうして?」

「好きな女に言われたら、我慢できなくなる。」

「我慢しなくていいよ。」

一条さんは、私の言葉に一瞬だけ目を見開いた。

そしてすぐに、眉をひそめて優しい声で言った。

「……本当に、それでいいの?」

私はうなずいた。何も考えたくなかった。

ただ、誰かにそばにいてほしかった。

「うん。今夜は……一条さんといたい。」

彼はしばらく私を見つめたあと、ゆっくりと手を取って、歩き出した。

その手は、驚くほど優しくて、あたたかかった。

シャワーを浴びて戻ると、ホテルのベッドの隅でタオルを巻いたままの私を、一条さんがそっと抱きしめた。

その腕のぬくもりに、私は心まで包まれていく気がした。

「……本当に、いいの?」

彼の声は、優しく、でもどこか震えていた。

「うん……」

私は小さく答えた。
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