誰にでも優しいくせに、私だけに本気なんてズルい– 遊び人エリートのくせに、溺愛が止まらない –
「はい、どうぞ。」

穏やかな声とともに、私を見つめる視線。

「……ありがとうございます。」

少し戸惑いながらも、その隣をすり抜けてエレベーターに乗り込む。

(別に、今のエレベーターってすぐ閉まらないようになってるのに……)

そう思いながらも、なぜか胸の奥がふわりと温かくなる。

「どういたしまして。」

部長もエレベーターに乗り込み、隣に立つ。

沈黙。近い距離。

こんな時間に、こんな風に二人きりで並ぶなんて——ちょっと、変な感じだった。


駅前の小さな横道にある定食屋。

一人では絶対に入らないような、年季の入った暖簾が揺れていた。

「ここ?」

思わず問い返すと、桐生部長は「ここ。」とあっさり言って扉を開けた。

ガラガラ……と引き戸の音が鳴る。

中は意外にも明るくて、カウンター席とテーブルが数席。
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