誰にでも優しいくせに、私だけに本気なんてズルい– 遊び人エリートのくせに、溺愛が止まらない –
「うん、ずっと一緒……」

その瞬間――

熱いものが私の奥に注がれていく。

ふたりの想いがひとつになる証。

心も体も満たされて、私は、彼だけの女になった。

誠人さんの腕の中、穏やかな体温に包まれて、私はまどろんでいた。

心地よい眠気に身を預けかけたその時、スマホの振動音が静寂を破った。

「誰?電話」

誠人さんの低い声に、私はスマホの画面をそっと覗き込む。

――桐生部長。

しばらく迷った末、私は着信を切った。

すると間もなくメールが届く。留守電メッセージだった。

恐る恐る再生すると、あの声が静かに流れ出した。

「……俺は今でも、紗英を愛している。……幸せになってくれ。」

短く、でも深く胸に届く言葉だった。

もう遅い。――でも、遅くても、あの人なりに私を想ってくれたことが、わかってしまった。

「桐生部長……」

込み上げる涙が、ぽろりと零れる。
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