誰にでも優しいくせに、私だけに本気なんてズルい– 遊び人エリートのくせに、溺愛が止まらない –
「あーあ。白ける。」

誠人さんの声に振り向くと、彼はすでにシャツを羽織っていた。

「誠人さん……?」

ベッドにまだ温もりが残るのに、彼の背中は冷たかった。

「桐生部長を想って泣くなんて、あり得ないでしょ。」

その一言に、心が締め付けられる。

私の涙は、思い出に対する感謝のものだった。なのに――

「もう、これっきりにしよう。」

差し出されたのは、私の服。

その仕草はまるで、早く着て帰れと言っているようだった。

「好きだって、言ってくれたよね……?」

震える声で問うと、誠人さんは肩をすくめた。

「桐生部長が本気になる女って、どんな奴か試したかっただけなんだよね。」

信じられなかった。

胸の奥にしまった温もりを、たった一言で踏みにじるなんて。

「そんなの、嘘でしょ……?」

けれど誠人さんは、もう私を見ていなかった。
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