誰にでも優しいくせに、私だけに本気なんてズルい– 遊び人エリートのくせに、溺愛が止まらない –
「酷い……」

私が呟くと、誠人さんは目を手で覆った。

「酷いのはどっちだよ……」

肩が震えていた。

「俺を好きだって、言ったのはウソなんだろう?」

ベッドの端で膝を抱える誠人さんの姿は、まるで子どものようだった。

「誠人さん……」

手を差し出すと、彼はその手を振り払った。

「行けよ。桐生部長のところへ……」

誠人さんの声が、泣いていた。

「愛してる男のところへ行けよ!」

その言葉が胸に突き刺さる。

私は震える手で服を着て、何も言えずホテルの部屋を出た。

冷たい夜風が、涙の跡をなぞっていく。

ネオンが揺れる夜の街を一人歩く。

私を愛してくれた人と、私が愛している人。

どちらにも嘘をついた――その罰だ。

愛しているだけじゃ、誰も幸せにできない。

誰かを傷つけずに、誰かを選ぶことなんてできない。

それが、恋なんだと初めて知った。
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