誰にでも優しいくせに、私だけに本気なんてズルい– 遊び人エリートのくせに、溺愛が止まらない –
すると、不意に後ろから腕を掴まれた。

「……えっ?」

驚いて振り返ると、そこにいたのは――桐生部長だった。

「なんで……どうして……?」

私は思わず寂しそうに笑った。

「……一条さんを傷つけてしまいました。私、最低ですよね。誰も選べなくて……結局、ひとりです。」

自分でも情けなくなるくらい、声が震えた。

そっと桐生部長の手を振りほどこうとしたその時、彼の声が降ってきた。

「一人にはしない。」

「え……?」

「戻って来い、紗英。おまえは一人じゃない。俺がいる。」

その言葉に、時間が止まったようだった。

「……でも、私は……」

「おまえを失って、自分の愚かさに気づいた。欲に逃げた過去も、美羽に心を許したことも、すべて後悔してる。おまえを傷つけたことが、一番の罪だ。」

桐生部長が、そっと私の頬に触れた。

「これからは、俺の全部で――おまえを守る。」

その瞳には、嘘も迷いもなかった。

私は、もう一度だけ信じてみようと思った。

この人となら、やり直せるかもしれないと――
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