誰にでも優しいくせに、私だけに本気なんてズルい– 遊び人エリートのくせに、溺愛が止まらない –
「どうして、定食屋さんなんですか?」

味噌汁の湯気越しに、思わず尋ねてしまった。

桐生部長は箸を動かす手を止めずに答える。

「何となく。篠原さんは、こういう店が好きかなって思って。」

「……女子はみんな、イタリアンとか好きですよ。」

自分でも少し棘のある言い方だったかなと思ったけど、彼は気にする様子もなく微笑んだ。

「知ってる。」

そのひと言に、胸がざわつく。

知ってて、それでも定食屋なんだ。

どうしてそんなことを考えてるんだろう。

ただの同僚、いや、上司。なのに、心が落ち着かない。

「今度……」

口が勝手に動いていた。

自分でも、何を言おうとしたのか分からない。

その瞬間、彼がこちらをちらりと見て、にやりと笑った。
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