誰にでも優しいくせに、私だけに本気なんてズルい– 遊び人エリートのくせに、溺愛が止まらない –
スーツ越しの彼の体温と、低くささやく声に頭が真っ白になる。

「ぶ、部長……!? 人が、いますけど!」

耳元で必死に抗議する私に、彼はくすっと笑った。

「恥ずかしがってるの? 可愛いな。」

……え? なにこれ、何のプレイですか!?

もしかして、わざと!?

エレベーターの空気は一気に変わって、私はただただ顔を赤くするしかなかった。

エレベーターの扉が開き、あの男性社員が一歩外に出る前に、ふと振り返った。

「桐生部長、相変わらずですね。」

意味ありげに笑いながら、そう言い残して去っていった。

「……なんだ、その“相変わらず”って」

部長が少しむくれたように呟いたのを聞いて、私はつい笑ってしまった。

「やっぱり……いつもこういうことしてるんですね。」
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