誰にでも優しいくせに、私だけに本気なんてズルい– 遊び人エリートのくせに、溺愛が止まらない –
(……これは、“食事”の誘い? それとも——)

胸が、ゆっくりと高鳴る。

何をどう答えたらいいのか、一瞬、分からなくなってしまった。

「な。そうしよう」

「……はい」

頷いて席を立ち、桐生部長と一緒に店を出た途端、ふっと足元がふらついた。

ワインが効いてきたのか、空気が急に冷えたからか——どちらにせよ、不安定な感覚。

「わっ……」

その瞬間、腕が伸びてきて、私の体をしっかりと受け止めてくれたのは桐生部長だった。

「部長……」

思わず漏れた声が、自分でも驚くほど甘かった。

やばい。

こんな声を出したら、桐生部長の思い通りになってしまう。

なのに、彼はためらいもせず私を抱きしめるように支えた。

「帰りはタクシー?」

「え? はい……」
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