誰にでも優しいくせに、私だけに本気なんてズルい– 遊び人エリートのくせに、溺愛が止まらない –
答える間もなく、彼はスマートにスマホを取り出し、タクシーを呼んでくれる。

すべての動作が、スマートで自然で、私の酔いがますます深まっていく気がした。

「……一人で帰れる?」

すぐそばで聞こえるその声は、いつもより少し低くて、優しい。

「……あ、ああ……」

どうにか返事をしたけれど、本当はこのまま少しだけ、彼の腕の中にいたかった。

そんな自分の気持ちが怖くて、私は視線をそらした。

「やっぱり俺がついてないとダメだな。」

そう言って、桐生部長は何のためらいもなく、私をタクシーに乗せると、自分も隣に腰を下ろした。

心臓がうるさい。

このまま——お持ち帰りされても、いい。

「家、どこ?」

「……北町の方です。」

そう言うと、部長は運転手に告げ、タクシーは静かに走り出した。
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