誰にでも優しいくせに、私だけに本気なんてズルい– 遊び人エリートのくせに、溺愛が止まらない –
夜の街を窓越しに見ながら、私はそっと隣を見る。

——本当に、送ってくれるだけ?

そんな気持ちが渦巻いて、気づけば私は、彼の手をそっと握っていた。

自分の行動に驚きながらも、もう止められなかった。

「今日のお礼に……家で、コーヒーでもどうですか?」

ほんの少しだけ震えた声。

でも、もう後には引けない。

部長は黙ったまま、私の手を優しく包み返す。

「……いいのか?」

その声が、やけに優しくて、熱くて。

私は静かに頷いた。

部長の手のひらが、私の鼓動の速さに気づいてしまったら——

きっともう、何も隠せない気がした。

タクシーが私の家の前で止まった。

桐生部長が先に降りて、私に手を差し伸べる。

その手に触れるのが、どうしようもなくくすぐったい。

「えっと……お金、出さないと……」
< 51 / 291 >

この作品をシェア

pagetop