誰にでも優しいくせに、私だけに本気なんてズルい– 遊び人エリートのくせに、溺愛が止まらない –
“告白されて付き合った”

それだけの一言なのに、どうしてこんなに心がざわつくんだろう。

私は――部長にとって、ただ誘われるだけの存在?

それとも、まだ“落とせない女”でいられているのだろうか。

そんなふうに、自分でも答えの出せない気持ちが胸をかき乱していた。


上林さんの冗談に付き合っていると、桐生部長が私にウィンクした。

「えっ……」

「お手洗い、そろそろタイミングだと思うよ。」

「ああ、ありがとうございます。」

そう言って私はトイレに向かった。

トイレでは女子達が桐生部長の話をしている。

「桐生部長、モデルと付き合ってたって。」

「やっぱり……あの顔で、あの仕事ぶりだもん。そりゃモテるよね。」

「そりゃモテるよね。」

パウダールームには、華やかな笑い声と香水の匂いが満ちていた。

鏡の前でお化粧を直す女子たちが、楽しそうに桐生部長の話題で盛り上がっている。
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