誰にでも優しいくせに、私だけに本気なんてズルい– 遊び人エリートのくせに、溺愛が止まらない –
「……桐生部長。」

声が震えてしまう。

その隣には、瑞樹ちゃんがいた。

しかも、桐生部長の腕に、まるで恋人のように絡みついている。

「部長ぅ……」

甘えた声を出す瑞樹ちゃんが、まっすぐ部長を見上げている。

その腕はしっかりと、彼のスーツの袖を掴んでいた。

私は、動けなかった。

さっきまで、私だけが特別だと思っていた。

でも――やっぱり、違ったの?

桐生部長は、私に気づいているのに、瑞樹ちゃんの腕をほどこうとしない。

「部長、今夜……一緒に帰ってくれませんか?」

瑞樹ちゃんの甘ったるい声が、廊下に響いた。

まるで恋人同士の別れ際のような口ぶりに、私は思わず息を呑む。

「お願いです、ちょっとだけでいいんです。今日、ずっとお話ししたかったんです……」
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