誰にでも優しいくせに、私だけに本気なんてズルい– 遊び人エリートのくせに、溺愛が止まらない –
ベッドのシーツをぎゅっと握りしめた。

「それでも……好きだった。いや、まだ――好き。」

自分の心が、自分でもどうにもならない。

部長の不器用な優しさも、時おり見せる寂しげな表情も、全部が忘れられない。

その夜、私はずっと眠れなかった。


翌朝。私は鏡の前に立っていた。

レースの縁取りが繊細な、柔らかな色の新しい下着。

それはまるで、恋に終止符を打つための儀式のようだった。

「部長に、一度だけ抱かれよう。」

そう思った。

それで、全部終わりにするんだと。

鏡の中の私は、どこか強がっていて、どこか今にも泣きそうで。

でも、心の奥は静かに決まっていた。

その人を想っている限り、私は前に進めない。

その想いを手放すために、最後に自分を預ける。
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