すべての花へそして君へ③
「てか卒業できたんだね」
「本当それね!」
「成績よくても出席日数がねえ」
「補習で何とか頑張りました」
「それは、あんたがというよりも先生たちがでしょ」
「ええ。全くもってその通りで」
校舎に着くと、「じゃ」と彼は一言それだけを言って歩みを速める。
「今頃緊張で吐きそうになってる奴をいじめるという任務が、今のオレにはある」
「あ、あんまりいじめないであげてね?」
苦笑いをしながら、そのままわたしも自分のクラスへ行こうと階段を上る。
「あ」
「ん?」
踊り場まで言ったところで、そんな素っ頓狂な声に思わず振り返ると、階下にいたヒナタくんがポケットに手を突っ込みながらこちらを見上げていた。
「ヒナタくん?」
「卒業おめでとう」
「……あ、ありがとう」
「あのさ、今日少し時間取れる?」
「式が終わってから?」
「うん」
卒業生は、式が終わった後もいろいろと残ってやることがある。明確な時間はわからないけれど、恐らくお昼前ぐらいには終わるかな。
「式の後、生徒会室でお祝いをかねてパーティーするって」
「おおお! やったー楽しみ!」
「だから、その前に」
「その前? パーティーの?」
それなら、頷く彼の言うとおり、本当に少しの間しか時間が取れないような気がするんだけど。それでいいのかな。
「うん。わかった!」
ま、それも彼はわかって聞いているんだろうから、大きく頷いておいた。