男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される

 と、イリアスがこちらに身を乗り出し小さな声で言った。

「もしかして、お前あの話聞いちゃった?」

 ギクリとする。

「あの話って?」

 平静を装い首を傾げると、イリアスは焦るようにして姿勢を戻した。

「や、知らないならいいんだ」
「よくねーよ、なんだよ」

 気になって今度はこっちが身を乗り出すと、イリアスはちょっと逡巡する様子を見せた後でもう一度こちらに身を乗り出した。

「お前、ラディス団長と噂になってんだよ」
「は?」

 予想だにしていなかった言葉に一瞬ぽかんとしてしまった。

「う、噂って、何が?」
「だから……」

 一応訊くと、イリアスは更に声を潜め続けた。

「お前が、ラディス団長とイイ仲だって」
「なんで!?」

 思わず大きな声が出てしまった。

 昨夜の件は関係なさそうだが、それはそれで間違ってはいない分大きな焦りを覚えた。
 しかし、イリアスの反応からして私が女だとバレたわけではなさそうだ。
 ということは、トーラとラディス団長が噂になっているということで。
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