男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される
「どういうことだよ!」
「戻りながら話すよ」
イリアスは周囲を気にしながらトレーを持って立ち上がった。
私も残っていた水を一気に飲み干し立ち上がる。
食器の返却口に向かいながらイリアスは話し始めた。
「お前、昨日ラディス団長とイェラーキを見に行ったんだって?」
「あ、ああ」
「それでだろ。一部の連中がそう言って回ってんだよ。お前が団長に色目を使ってるって」
「色目!? オレは単にイェラーキに会いたかっただけだ!」
「だろうな。お前が馬が好きなことは俺も知ってるし。だから、ただの妬みだろ」
軽く言った後で、イリアスの目が少し真剣さを帯びた。
「勿論俺はそんな馬鹿な噂信じねーけどさ、そういうことを言う奴も中にはいるから気を付けろよ」
それを聞いて、罪悪感でまたズキリと胸が痛んだ。
「……わかった。気を付ける」
しっかりと頷くと、イリアスはいつものように笑った。