男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される

男装聖女はドジを踏む 3


「あとで君に話がある」

 厩舎内を掃除しながら、朝聞いたザフィーリの声が脳内でぐるぐると回っていた。

 どうしよう。話ってなんだ。
 まぁ十中八九、昨夜の件だろうけれど。

(てか、“あとで”っていつだよ!)

 騎士になったばかりのザフィーリは今イリアスと共に城内にいるはずだ。
 次にあいつと会う機会があるとしたら昼休憩か、夕飯時だろうか。
 しかしそうとも限らない。こちらは城内の様子はわからないが、向こうは私がここにいることを知っているはずで、手が空いた隙にひょっこり現れる可能性は十分にある。
 お蔭で朝からずっとそわそわしっぱなしで落ち着かなかった。――そんなときだ。

「ぅわっ!?」

 ドンっといきなり背中に強い衝撃を受けて私はそのまま前のめりに倒れた。
 瞬間、馬に蹴られたのかと思った。しかしそれならきっともっと強い痛みを感じるはずだ。驚きはしたがそれほどの痛みはなかった。
 ただぬかるんだ地べたに倒れたために服が泥だらけになってしまった。顔にも泥が飛んだ気がする。
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