男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される
「しかしそれが真実であるとするならば、君はこの騎士団の規律に反していることになる。僕は一騎士としてそれを団長に報告せねばならない」
「え!?」
それはマズイ。
ラディスにこの件がバレてしまう。確実に迷惑を掛けてしまう!
そんな私の焦りを、別の意味にとったのだろう。
ふぅとザフィーリは息を吐いた。
「やはり、僕の推理は間違っていなかったようだね」
「あ、や、」
……どうする。どうすればいい。
しかし、まさかあれは私本人だとは絶対に言えない。
(もう、その話に乗るしかない!)
私は腹を括りガバっと頭を下げた。
「頼むザフィーリ! このことは黙っていて欲しい!」
「やはりね……」
はぁ、とまた大きな溜息が聞こえた。
「それで、彼女と君との関係は?」
「……あれは、オレの妹だ」
「妹君か。名はなんという?」
「トーカ」
咄嗟にそれしか出てこなかった。
「トーカ。とても良い名だね。それで、なぜ彼女はここに?」
頭を下げたまま、私は脳をフル回転させる。
「オレの実家、ここからすげぇ離れた田舎にあるんだけど、アイツ昨日突然オレに会いにきたんだ。そんで、ここに来るまでの間に路銀を使い果たしちまったっていうから、仕方なく昨晩だけオレの部屋に泊まらせた。勿論、イリアスにも内緒だ」