男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される

「君は、トーカさんだね」

 私は目を泳がせながら首を傾げる。

「え、えーと?」
「覚えているかな。昨夜、騎士団の寄宿舎で会った」
「あ、あ〜~」

 私がそんな曖昧な返答をすると、ザフィーリはふっと穏やかに笑った。

「大丈夫。事情は君の兄から聞いているよ」

 彼は、私の態度がおかしいのは騎士団の規律を破ったことを気にしているのだと勘違いしたようだ。
 と、彼は私に頭を下げた。

「昨日は失礼な態度をとってしまってすまなかった。あのときは、つい君の美しさに見惚れてしまって」

 そういう恥ずかしいセリフを本人目の前にして言っちゃうんだこいつ、と内心で驚きつつ私は焦りを感じ始めていた。

(なんかやっぱイメージと違ったとかならないのかよ!?)

 昨夜は暗がりで、更にはメガネを掛けていなかったから補正がかかって良く見えたのだと思っていたのに。

(じゃあ、ザフィーリはあの一瞬で、本気で私に一目惚れしたってことか……!?)

 そう思ったら、急に恥ずかしさがこみ上げてきた。
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