男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される
ザフィーリは顔を上げるとカチリとメガネの位置を直した。
「申し遅れたね。僕は君の兄トーラの友人で、ザフィーリという」
あ、一応ザフィーリの中で私は友人ということになっているんだと頭の隅で思っていると。
「これを、君に」
目の前に綺麗な花束が差し出された。
「君がすぐに実家へ帰ってしまうと聞いてね。どうしてもその前にもう一度会いたくて急いで来たんだ」
「えーと……」
まさか受け取るわけにもいかず、どう断ろうかと考えている間もずっとザフィーリはこちらに熱い眼差しを向けていて。
「それにしても、都に入ってすぐにこうして逢えるなんて、やはり僕と君は運命の糸で結ばれているようだ」
「え」
「急なことで驚くかもしれないけれど、僕は君を一目見た瞬間から」
「これは、どういうことだ」
――!?
そんな低音が背後から聞こえ、びくりと肩が飛び上がった。
恐る恐る振り返ると、案の定そこにいたのは。
「ラ、ラディス団長!?」
そう甲高い声を上げたのはザフィーリだ。