男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される

男装聖女は尋問される 1


「それで、どういうわけだ?」

 そう問われ、私は一年前まで働いていた宿の一室でダラダラと冷や汗を流していた。

 ――あの後、ラディスは宿に戻りヴィオーラさんに少しの間部屋を借りたいと頼んだ。
 ヴィオーラさんは私たちの表情から只事ではない雰囲気を感じ取ったのだろう。

「別に構いやしないけど……一番奥の部屋が空いてるよ」

 そして2階に上がっていく私たちを心配そうに見送っていた。

 ラディスは奥の部屋に入ると私を化粧台の椅子に座らせ、自分はベッドに腰を下ろした。
 そして先ほどから腕を組み私が話し出すのを待っている。

(どうしよう……)

 私は俯き、どこからどこまで話すべきか迷っていた。
 化粧台の上には例の花束が置かれていた。あの後ラディスが拾い上げ、ここまで持ってきたのだ。
 あのときのザフィーリの青ざめた顔が脳裏に浮かぶ。
 私の話し方次第で、あいつの立場が悪くなってしまうのでは……。そう思うと、なかなか言葉が出てこなかった。
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