男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される
 バサッと足元に花束が落ちる。
 騎士団長の冷え冷えとした視線に見下ろされ、その顔は可哀想なくらいに青ざめていた。

「な、なぜ、団長がここに」
「こちらで人と会う予定があってな。お前こそ、こんな真っ昼間から女性と逢引きか? 騎士としての職務はどうした」
「いえ、その……」
「申し開きは後で聞こう。さっさと城に戻れ!!」
「は、はいっ!」

 ラディスの鋭い怒声にザフィーリはピューッという音が聞こえてきそうな勢いでその場を走り去っていった。

(ザフィーリ……)

 なんだかちょっと可哀想になってしまって、せめてもと落ちていた花束を拾おうとしたときだ。
 ポンっとその肩に手を置かれ、ヒっと小さく悲鳴が漏れてしまった。

「お前には今話を聞こうか。藤花」

 振り返るとめちゃくちゃ怖い笑顔があって、人のことを憐れんでいる場合ではなかったと、私は悟った。


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