男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される

「姿勢が悪いとそうなるんだ。まぁその辺はこれからちゃんと」
「わ、私はここから飛んでいくから!」
「は?」

 その脚が止まると私はイェラーキの首を撫でながら「ありがとう」とお礼を言って、そのままふわりと浮き上がった。

「お、おい」
「大丈夫! 見られないように顔隠してくし。じゃ、またな!」

 こちらを見上げたラディスに手を振って私は逃げるように空高く飛び上がった。

(も~〜カッコ悪過ぎだし痛いし最悪だーー!)

 聞いてはいたけれど、まさかここまで痛いとは思わなかった。今もまだヒリヒリとしている。
 憧れていた乗馬にこんな落とし穴があるなんて。
 これからの乗馬訓練が一気に不安になってきてしまった。

(トーラの姿だったら、少しはマシだったりするのかな……)

 それから城の近くまで辿り着いた私はフードで顔を隠し城内の人目のなさそうな場所に降り立った。
 そして周囲を確認してからこっそりと聖女の力でお尻の痛みを治した。こんなことに奇跡の力を使ってしまい、なんだか物凄い罪悪感を覚えた。
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