男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される
すると、ふっとザフィーリが苦笑した。
「なぜ君が謝るんだい」
「い、いや、妹が、悪かったなって意味で」
慌ててそう誤魔化すと、彼はもう一度自嘲気味に笑ってから良く晴れた空を見上げた。
「でも僕は後悔はしていないよ。彼女と出逢えた運命に感謝すらしている」
そのすっきりとした顔を見て私は目を大きくした。
(強いな、こいつ)
私が彼の立場だったら、そんなふうに思えるだろうか。
例えそれが一目惚れだったとしても。
私だって自分の恋に……ラディスのことが好きだという気持ちに気付いたのはつい最近のことだ。ザフィーリと大して変わらない。
(もし、ラディスと別れの時が来たら、私は……)
と、そんなことを考えていると、じっと顔を見られていることに気が付いた。
「な、なんだよ」
「いや、やはり兄妹だね。見れば見るほどよく似ている。彼女を思い出すよ」
そのじっとりとした視線に、私は顔が引きつるのを感じた。
(こいつ、実はまだ大分引きずってるんじゃないか!?)