男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される
男装聖女は騎士見習い 4
そして、その夜。
ラディスの部屋の前に立ち、私はなかなかノックの手を出せずにいた。
この緊張感には覚えがあった。
中学の頃、担任教師から職員室に来いといきなり呼び出しを食らったときも、こうして職員室のドアの前に立ちなかなかノックすることが出来なかったのだ。
そのときは結局大した用ではなくて、安堵と共になんだよと少し腹が立ったのだけど。
だが今回はそのときとはまた少し緊張の質が異なっていて。
(イリアスが変なことを言うからだ)
「お前、もしかしてラディス団長に気に入られたんじゃねーの?」
「は?」
先ほど、食堂で夕飯を食べていたときのことだ。
イリアスが妙な顔つきで言ったのだ。
ちなみに今夜の夕飯のメニューはオートミールのミルク粥。豆や野菜と一緒にトロトロに煮込まれていて美味しかった。
「ほらお前言ってただろ、目の敵にされてるって」
「言ったけど、でもお前そんなわけないって」