男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される
「ご、ごめん、起こしちまったか?」
窓の外はまだ暗い。
起きるには大分早い時間だ。
「なんかすげぇ魘されてっからさ。嫌な夢でも見たのか?」
「えっ……オレ、もしかして寝言とか言ってた?」
何か余計なことを口走らなかっただろうかと焦る。
「寝言っつーか、苦しそうに唸ってた」
「そ、そっか。マジでごめん」
ほっとしつつ苦笑する。
「どんな夢見てたんだよ」
「えーと、」
……言えるわけがない。
向こうの友達と、お前たちとの間で迷っていた、なんて。
「あんまり、覚えてない」
「なんだよ。ま、夢なんてそんなもんだよな。気にしないでもう少し寝ろよ」
そうして彼は仰向けになって目を瞑った。
「……イリアスはさ、」
気が付いたら、そう口が動いていた。
イリアスがもう一度目を開けてこちらを見た。
「ん?」
「……や、やっぱ、なんでもない」
「なんだよ、気になんだろ」
少し迷って、でも思い切って私はあとを続けた。