男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される

男装聖女と魔女 3


 慌ててトーラに変身しようとするが、焦って集中出来ていないせいか、それともやはり力を使い過ぎたのか、変身出来なくて更に慌てる。
 そこで、ラディスの溜息が聞こえた。

「……いつから起きていた?」

(え?)

 ラディスの問いに副長はあっけらかんと答える。

「えーっとね、ラディスが彼女を抱き上げた辺りから」

(そ、それって、私が呪いを消してすぐってことじゃ……!?)

 ということは姿もばっちり見られたということで、頭が真っ白になった。

「起きたならすぐに言え」
「だって、ふたりが仲良く話してるからさ、声を掛けるタイミングが掴めなくて。ねぇ、誰なんだい? 紹介してよ」

 なんだか揶揄うような口調のあとで、キアノス副長は続けた。

「それと、呪いってどういうことか、詳しく知りたいな」
「……」

 小さく息を吐いてラディスがこちらにやって来る気配がした。
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