男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される

「ま、まぁ、いつもみたいになんか適当言って誤魔化すよ」
「もしまた何かあったらすぐに俺に言え」
「わかった。……そういえば、あの子、フェリーツィアは今どこに?」

 副長に呪いを掛けた張本人かもしれない彼女のことが気になった。
 するとラディスはスっと目を細めた。

「おそらく今頃は自室でほくそ笑んでいるのではないか?」
「……これから、どうするんだ?」

「ラディス?」

 そのときキアノス副長の声が聞こえて私は慌てた。まだ元の姿のままだ。
 私は副長からは死角になるようになるべくソファに低く身を沈めた。
 ラディスがそんな私を見てからベッドの方へと戻った。

「調子はどうだ?」
「私は、一体……?」

 キアノス副長は、状況がわかっていないようだった。

「お前、急に倒れたんだぞ」
「私が?」
「覚えていないのか?」
「ああ……すまない。そうか、心配をかけてしまったみたいだね」
「皆の前でだったからな。皆心配している。明日、平気そうなら元気な姿を見せてやるといい」
「うん。そうするよ。……最近、どうも調子が悪いと思っていたんだけどね」

 そう苦笑したあとで、キアノス副長は続けた。

「ところでラディス。そこにいる女性は誰かな?」

 心臓が飛び出るかと思った。


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